草庭

Shiga 2025
室町時代から続く伝統的な桶づくりを中心に、職人による手作りの木製品を制作し、歴史ある木工技術を継承しながらも、革新的な作品づくりも積極的に取り入れている中川木工芸による、食とクラフトのセレクトショップで、琵琶湖岸に建つ日本家屋をコンバージョンした「草庭」のデザインである。
杉型枠でつくったコンクリートの塀を横切り、庭を抜けていくと琵琶湖が見えてくる。






現地調査、既存図をおこす作業のなか、中央に配置された和室一部屋が入れ子状態にあることに注目した。琵琶湖に面した東側に縁側、西には庭に面した廊下、南にも廊下があり、和室を中心とした回廊になっていた。この形状を生かしたい思いが強くなった。
エントランスの位置を南側廊下へ変えて、入口から覗いたときに様々なサイズの開口が連続して続き、一番奥に料理をする店主の姿が見える景色を想像した。


天井を抜き開放的な高さを出した左官で塗られた中央の入れ子の中に物販スペースをつくり、周辺回廊にはイートインコーナー、大テーブルのある厨房が波紋のように広がっていく。
波紋の先にある、もと台所と和室だった2室を1つにして、イベント時に大人数が囲めるような5メートルある大テーブルをモルタルの研ぎ出しでつくった。窓からは湖面の反射光が木々の合間を抜け、揺らめきながら入ってくる。






かつての住居玄関であった部分は琵琶湖をのぞめる落ち着いた個室として、木工芸の商談にも使えるような計画とした。





先人はどのような生活を想像し回廊をつくったのだろうか。今は住人だけでなく、人々の集まる場所になった。訪れる人々の日常に、食と共に工芸に触れる機会が増えていたら心嬉しい。
大胆に変えるべきか、倣うべきなのか、リノベーションはいつも考えに考える。何れにしても先の建築というものと制限があるからこそ、次のデザインが生まれるだと思う。これからも先人の考えたことに敬意を払い、次へ繋げていけるものを深く考えていきたいと思う。

工事内容/リノベーション
業務内容/設計監理
所在地/滋賀県大津市 草庭
用途/カフェ・セレクトショップ
施工/松井建設株式会社
写真/貝出翔太郎
構造/木造
階数/地上2階建て
改修部分床面積/110㎡
工程
設計期間/2022年11月~2023年3月
施工期間/2023年4月~2024年2月